
顧客の体験を起点にした関係構築を考えていく上で欠かせなくなると言われているのがオンライン上の接点とデータの活用です。コロナ禍で加速度的に進んだデジタル化によって消費者の生活の中にオンラインの活用がより浸透してきています。それ以前から常にSNSでコミュニケーションを取っていたり、スマホで撮影した写真や動画を共有したり、ネットショッピングやニュースアプリから通知されたオススメを見てみるなど、オンラインを主軸に行動するケースが増えてきています。その中で人のデータはどんどん蓄積・活用されるようになっており、今やデジタルがリアルも包み込んでいるような世界になっていると言われています。本章ではそんな時代の顧客体験を考える上で注目されているOMOという言葉を紐解きながら、改めてアフターコロナの顧客体験について考えていきたいと思います。
OMOの概要
OMOとは、Online Merges with Offline(オンラインとオフラインの融合)の略称で、元Google Chinaのトップであった李開復が提唱した言葉です。オンラインと店舗などオフラインの境界をなくし、個々の顧客に合わせた最適なサービスを提供することで顧客体験の向上を目指し提唱されたコンセプトになります。
インターネットの発達とともに私たちの生活の中でオンラインが身近に存在しているのが当たり前になりました。今やほとんどの人がスマートフォンを持っており、他にもスマート家電やスマートカーが登場するなど、完全なオフラインは存在しなくなってきています。そこでオン・オフに関係なく適切なタイミングで適切なチャネルを提供することが、より良い顧客体験の提供に繋がると考えられているのです。
これに似た言葉にO2O(Online to Offline)がありますが、こちらはWEBサイトやWEB広告などオンライン上で情報発信を行い、そこから実店舗などオフラインへと誘導することで商品やサービスの購入を促す施策です。その逆もありますが、O2Oではオンラインとオフラインは別物と捉え相互誘導していくもので、どちらかと言えば企業側が主体の考えであったのに対し、OMOは顧客視点での考えが軸となっています。
OMOの特徴
・オンラインとオフラインの区別がない
・リアルな世界もデジタルの世界に含まれている
・顧客が中心

この考えが登場してきた背景には顧客の価値観の変化が挙げられます。モノからコトへと移り変わってきたことで、商品そのものの性能や品質が良いのは当たり前となり差別化のポイントにならなくなっています。そんな当たり前に加えて、その商品をどんな場所で・どんな時に・どう手に入れたのか、そして手に入れたことで何が起きたのかなど体験の方に価値を感じるようになってきているのです。
しかもその体験は、オフラインに留まりません。SNS上で簡単に体験を共有するなど、オンラインとも繋がっていることが当たり前になっています。飲食店で友人と一緒に食べる料理、ハロウィンイベントなど、その場を楽しむだけでなくオンラインでも共有することで、そこにいるメンバー以外とのコミュニケーションも取っています。オフラインの場だけがリアルなわけではなく、オンラインで共有することも含めて、どちらも複合的に利用することでその瞬間の体験を楽しんでいます。
特にZ世代は、生まれてから高速のインターネットやスマートフォン、SNSがすでに存在している環境下で生活しているデジタルネイティブ世代です。オンライン・オフラインを意識することがなく、生活に両者が溶け込んでいるのが当たり前の世代が消費の中心として台頭してきています。そのため、オンラインもオフラインも関係なく、蓄積されたデータをもとに個々の行動や嗜好などに合ったサービスを提供することが、より良い顧客体験を実現するとしてOMOが注目されるようになりました。
OMOでは、あらゆるチャネルからの顧客データをまとめて管理することで、個々に合わせた最適なサービスの提供を実現しようとしています。データを基に、顧客の状況に応じた最適なタイミング・最適なチャネルで顧客と接していきます。そして接点を継続して持つことでさらにデータを蓄積し、より良い改善にも繋げていくことを目指しています。これらの取り組みの結果が、顧客体験を向上し、エンゲージメントを高めることでファン化に繋がると考えられているのです。
「盒馬鮮生(フーマフレッシュ)」の例
OMOの説明の中でよく見かけるのが、中国アリババが運営するネットスーパーである「盒馬鮮生(フーマフレッシュ)」の事例です。ネットスーパーは、コロナ禍でも直接鮮度や品質を確認して購入したいという想いがありリアルからの移行が進まなかった分野の一つでもありますが、こちらはオンラインもオフラインもその体験にこだわることで成果を挙げています。
盒馬鮮生は、24時間注文OK・半径3km以内の地域には無料かつ30分で配送・リアル店舗でも買い物がができる、といった特徴があります。この特徴だけでは、Amazonのように便利だから支持されているのかと思われるかもしれませんが、盒馬鮮生のすごさはオンラインでの買い物を安心して楽しめるようにするためのリアル店舗での体験にあります。ただ生鮮食品が陳列してあるだけでなく、生簀で泳ぐ魚などに触れその新鮮さを確認できたり、それをさらにその場で調理してもらい食事することもできるようになっているそうです。リアル店舗でも決済は、アリペイに集約することで個々の購買・行動データを一括管理し、オンラインとオフラインでお互いに不便と感じる部分を補うことで、盒馬鮮生というブランドでの顧客体験を向上しています。
コロナ禍で半強制的にオンラインの関連サービス・技術が急速に発達・拡大したことで、さらにオンラインが中心にある生活になりつつあります。ですが、オンライン一本になっているというわけではなく、ECショップで購入しても、商品自体は自分の都合の良いタイミングで店舗で受け取るサービスが展開されるなど、顧客がその時々の状況に合わせて一番都合の良い方法を選択できるような状況が生まれ始めています。顧客がオンラインとオフラインを自由に活用する時代に、サービスを提供するブランド側もそれらを別物と捉えるのではなく一連の接点として顧客体験を生み出していくというOMOの思考は、これからを考える上で欠かせない概念となってきているのではないでしょうか。
(参考:アリババの新型店舗『フーマー』とは?|CNBC International https://youtu.be/sso6bITfuDU)
今後求められる顧客体験とデータの活用
今後は、顧客ごとに異なる状況をふまえた、最適な商品やサービスの在り方がますます求められていきます。ですが、顧客に寄り添っていくことは言葉以上に難しいものです。そこで顧客理解を深め、行動を起点とした体験を設計していく上でデータの活用が有効になります。デジタル技術の発展により、行動履歴や年齢、地域といった情報の蓄積・活用が容易になってきています。レコメンド機能が分かりやすい例ですが、年々その精度を上げ顧客が調べる前にその人だけの役立つ情報が取得できるようになっています。興味・関心のない広告が表示されることもなければ、自分にとって有益な情報だけが得られるのは非常に便利で、顧客体験を良くすることに繋がっていきます。
一方でデータの収集・活用については抵抗を感じる人も多く、議論や対策も進んでいます。データはあくまで顧客のために正しく活用することが重要になります。正しくというのは、プライバシー保護やセキュリティ対策を行い安心感があるといったことだけではありません。先ほども述べたように顧客ごとの状況に合わせた最適な商品やサービスの選択肢を提供するなど、提供されたデータに見合うもしくはそれ以上の価値を提供していくことが大切になります。
今後のキーワードは「顧客中心」であること。それを大前提に、アプリなどによるオンラインの接点、店舗やイベントといったオフラインの接点など双方で発生する顧客との関わりを重ね、丁寧にコミュニケーションを深めていくことが今後のビジネスには求められていくのではないでしょうか。








