顧客視点の商品作りでロス削減

顧客視点の商品作りでロス削減

 

製造現場で取り組む環境対策

小池 ここ数年、SDGsや環境問題に対しての関心が寄せられていますが、現場ではどのような取り組みが進められていますか?

清水 環境問題という点では、そもそもUVオフセット印刷自体がVOCフリーのインキを使用していたり、パウダーレスだったりと、当社の特殊印刷は環境に優しい印刷機から始まっているとも言えます。節電にも繋がる高感度インキを採用することで、従来3本ランプを使用してインキを乾燥させていた工程も、たった1本のランプで乾燥できるようになったり、本社工場全体がゼロ・エミッション電源を採用していたり、徐々に変えながらこれまでやってきました。
 ただ正直な話、これまでの取り組みは環境のためというよりも、効率化やコスト削減といった社内の取り組みが中心にありました。そしてその結果が、最終的には環境に優しい製造現場にも結びついてるかと思います。

山田 そうですね。例えば製造現場全体としては、普段使用している備品や資材を過剰な在庫を持たないように管理しています。期限はありませんが、適正な数量での管理をすることで使いすぎを抑え、大切に使う意識に繋がっています。
 また、備品類を選ぶときも、例えば商品梱包用のシュリンク包装材なら、リサイクルが可能な素材なのか、厚みは梱包する上で不足はないか、逆に過剰でもないかという点を考えて購入しています。過剰梱包はお客様のもとでの廃棄量を増やすことになってしまいますので、お客様の廃棄の手間も含め、いかに廃棄されるものを削減できるかを常に意識しています。やはり現場だと、この廃棄ロス削減が環境問題に繋がる大きな取り組みの一つかと思っています。

高木 印刷の現場では、製品の本生産を開始する前に行う、印刷位置の調整や、印刷濃度の調整の際に発生する用紙のロスをいかに削減できるかという取り組みがあります。この調整の際に使用した用紙は、商品として使用することができません。しかし、印刷の工程上必ず発生するものなので、これをいかに削減できるかに力を入れてきました。技術者の勘に頼るのではなく、このスピード・回転数なら何枚で安定するなど、いろんな因子を数値化して管理することで、誰もが初動の段階から安定した品質の印刷ができるようにしています。
 また、検査装置の導入と共に、必ず人の目でもチェックするポイントを設けるなど、後々多数のロスを出してしまう前に対処ができるようにしています。
 他に最近大きな効果があったものとしては、印刷時の湿し水(※)による廃液を削減した取り組みがあります。ろ過フィルターを取り付けることで、約2週間に1回100ℓほど交換していたのが、半年に1回程度に抑えることができています。作業者負担の軽減はもちろん、大切な水を守ることにも繋がっていますね。

※湿し水(しめしみず):非画線部(デザインのない部分)に印刷インキが付着しないように、刷版を予め湿らせておくための専用の液体。

KAIZENを積み重ね、ロスを防ぐ

小池 生産効率の向上やロス削減なども、重要な取り組みの一つですよね。どれだけ環境に優しい素材を活用した商品を提案していても、その製造段階で廃棄物を大量に出していたり、エネルギーを使いたいだけ消費しているような状態では、本当にお客様のニーズに応える商品とは言えないと思っています。
 さて、もう少しだけ現場での取り組みについて深掘りさせてください。先ほどお客様のところでのゴミを減らすという話があったのですが、お客様に商品を提供する作り手として、物作りにはどのような考えを持たれていますか?

清水 顧客視点は製造現場でも非常に大切にしています。これまでのロス削減の観点からいけば、自社内だけではなく、お客様の手間を含めた無駄・ロスを発生させないことを重視しています。不良を出したら、迷惑をかけるだけでなく、それを処理するために現物を確認したり返品したりと余計な作業をお客様にさせてしまうことになります。これは環境にとっても良くないですよね。資源を無駄にしてしまってる上、本来は不要だったエネルギーを使ってしまっています。
 ですから私たちは、作って終わりではなく、いかにその先まで目線をもっていけるかを大事にしながら、品質管理についても徹底しています。

山田 品質の点では、65期(2018年)に大きな転換期を迎えています。受注案件の増加に伴い、これまでの製造管理体制を見直し、より明確に、そして強固にするため、徹底的な原因追及、KAIZENへと乗り出しました。

清水
 まずは、トラブルが発生した際は現場の機械を必ず止めることを徹底しました。原因究明、対応策が確定するまでは絶対に機械を稼働させない。同じことを決して繰り返さない!
そんな想いのもと行いました。

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山田 KAIZENでは、とにかく話し合いながら根本的な原因を洗い出し、それを一つずつ潰すことを徹底的に行ってきました。作業マニュアルの改定や基準を見直したり、機械だけに頼らず人の目で必ず最終的な品質をチェックする専門の部門を作ったりもしましたね。

清水 日々積み重ねてきたKAIZENの取り組みにより、事故件数はグッと減少しました。これは不良によるロス削減はもちろんですが、お客様に安定して適切な商品を提供する力を備えた製造現場作りに繋がっています。ただ、これまでのKAIZENは、主に不良が発生してからのKAIZENが中心になっていました。そのため今は、そもそもの発生を食い止めるための、さらなるKAIZENにも力を注いでいます。作業マニュアルや指導の見直しもありますが、やはり人なので慣れなどによる事故の可能性もあります。そのため、意識を少しでも保てるよう「本日も一日、お客様目線の確認を怠りません。」といった、作業を開始する前の心構えを唱和することで、意識を半ば強制的に向ける取り組みを始めています。昨年から行っているのですが、事故なし記録を更新するなど、想定よりも大きな効果が出てきています。

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小池 最後に今後の目標などを聞かせください。

清水 現場環境の改善は引き続き継続していきます。ロボット導入による効率化や、働く方々の体にかかる負荷を取り除くなど、やれることがまだあります。
 環境への取り組みも同じで、これこそまだまだやれることがあると思っています。当社ではPP製品の取り扱いが多いのですが、その製造過程で発生した端材は全てリサイクルに回すことで、新たな製品に生まれ変わり活用されています。このような循環型の製造の仕組み作りなんかも取り組んでいきたいと思っています。
 その中でつくる責任としては、今後も「顧客視点」と「正しいものを作る」姿勢は引き続き一番大切にしていきたいと考えています。正しいものというのは、お客様が求めてるもの。例えば、箱ならちゃんと組み立てることができる。変なところが繋がってないとか。当たり前なんですが、それが疎かになってしまうとどれだけ印刷がキレイであっても、商品として成り立ちません。

高木 正しいものを作るには、顧客視点でいかに考えられるかが大切で、切り離せないことですよね。ただ標準色で印刷できてればOKではありません。かといって、過剰にあれやこれやとやってしまうのも、今回最初に問われた環境負荷の観点も含めて決して良いことではありません。

山田 自分たちの作りやすいように考えてているだけではダメですよね。お客様、そしてその先の消費者がどう感じるかまで考えていくことが、最終的には環境や社会貢献にも繋がっていくのではないかと思っています。そして、今後もさらなるKAIZENに取り組みながら、良い商品をお届けしていきたいです。

小池 何事も本質を見失わないことが重要ですよね。本日はありがとうございました。


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