
昨年1月、SDGs目標達成に向け「行動の10年(Decade of Action)」がスタートしました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の流行により社会の安定が崩れたことで、SDGsが掲げる貧困や飢餓、経済の持続などの目標達成に向けた動きが停滞したと言われています。発展途上国への支援のストップ、学校閉鎖による子どもたちの学びの場の消失、情報格差、失業や労働時間短縮による貧困への危機など、様々な場面での問題が浮き彫りにされました。一方で、人の動きが止まったことで、大気汚染が減少し、街や海辺に動物たちが集まるなど、自然環境の変化も見られました。人間の活動がどれだけ環境に影響を与えていたのか、その関係性を直視することにもなったのです。
改善された大気汚染
出展:ウェザーニュース https://weathernews.jp/s/topics/202004/210195/ より
2021年4月現在、ワクチンの接種が始まりましたが、従来の「普通」と呼ばれていた状態に戻ることは今後ないと言われています。なぜなら、その普通が今回の危機を招いたと考えられているからです。新型コロナウイルス感染症は、従来の社会の在り方や生活環境、消費における考えを根底から見直していくきっかけを生み出しました。今後は、経済、社会、環境を、いかにバランスよく成長させていくのか、新しい世界をどう実現していくのかを考えていく必要があります。
そしてSDGs「行動の10年」2年目にあたる2021年は、考えるだけではなく、より取り組みのスピードを速め、規模を拡大しなければならないと言われています。そのためには、新型コロナウイルス感染症の解決に向け、世界中の人々が動いたことで、大きな変化が生まれたように、国や地域、団体、企業、そして一人ひとりが目標に向け行動する必要があります。
昨年同月、本誌Vol.45でもSDGsが注目される理由や当社の考えをお伝えさせていただきました。今号からは、Afterコロナに向けてSDGsへの取り組みが活性化する今だからこそ、皆様のビジネスパートナーとして何ができるのか。さらに詳しくSDGs達成に向けた当社の取り組みや考えについてご紹介していきます。
今回ご紹介するのは、目標17「持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する。」に関わる取り組みです。昨年の活動を中心に、何を考え、どのようなことに取り組んできたのかをご紹介いたします。少しでも、今後の新たなビジネスヒントとなりましたら幸いです。
達成⽬標17 パートナーシップで⽬標を達成しよう
⽬標17とは
SDGsの⽬標17は、特定の課題解決を⽬指すものではなく、⽬標1から16までを達成するために、世界中の国、政府、国⺠、企業など、⼈々がパートナーシップを組むことで、持続可能な社会を作り上げることを⼤きな⽬標にしています。
SDGsの掲げるサステナビリティは、経済・社会・環境のバランスを取りながら発展していくことです。そして、そのためにはパートナーシップが⽋かせません。この関係性を分かりすく表したのが環境学者のヨハン・ロックストローム⽒が提唱している「SDGsウェディングケーキモデル(※下図参照)」です。「経済圏」「社会圏」「⽣物圏」3つの階層に分け、その関係を表しています。
出展:How food connects all the SDGs │ Stockholm Resilience Centre
https://www.stockholmresilience.org/research/research-news/2016-06-14-how-food-connects-all-the-sdgs.html より
3つの階層の関係性とは?
「経済」の発展は、⽣活や教育などの社会条件によって成り⽴ち、「社会」は最下層の「⽣物圏」、つまりは⼈々が⽣活するために必要な⾃然の環境によって⽀えられていることを表しているのです。
引用:SDGsメディア https://sdgs.media/blog/3834/より
この頂点にあるのが⽬標17「パートナーシップで⽬標を達成しよう」です。パートナーシップは、「誰⼀⼈取り残さない」という⽬標を実現させるために必要不可⽋だとされています。
パートナーシップで加速・拡⼤する
SDGsの取り組みは、単なる社会貢献活動ではありません。例えば、環境を守るために植林活動に寄付したとしても、社内で資源を大量に消費していては意味がありません。また、環境配慮商品を取り入れても、すぐに廃棄してしまう状況だとしたらどうでしょう? 全ての側面から課題解決を考えると、コスト面からも活動が消極的になってしまう可能性があります。そのため、SDGsに本格的に取り組んでいくためには、長期的なビジネス目線での課題解決策を講じていく必要があります。特に本業と結びつけ、仕組み化することで課題を解決していくことが重要だと言われています。SDGsが語られる際によく話に出るのが、近江商人の「三方よし」です。「買い手よし」「売り手よし」「社会よし」。SDGsはこれに、「未来」や「環境」が加わってきます。これら全てのバランスが取れることで持続性が生まれるのです。
しかし、企業に限らず個々にできることには限界があります。そこで、パートナーシップが重要になります。同じ目標に向かうメンバーが自然と集まり、その取り組みを強化していくことで、目標達成に向けた活動が加速・拡大すると言われています。
本業×パートナーシップで課題を解決する事例
スポーツ⽤品メーカーアディダス
・解決する課題:海洋汚染問題
・パートナー:パーレイ・フォー・ジ・オーシャンズ (海洋ゴミ削減の活動をするNGO。以下Parley。)
・取り組み:プラスチック廃棄物を⽷や繊維といった素材に⽣まれ変わ らせ、その素材で新たにランニングシューズやトレーニング ウエアを発売。
アディダスのビジネスは、スポーツをする⼈が製品を購⼊することで成り⽴っています。しかし、このスポーツができる環境がなくなってしまえば、アディダスのビジネスモデルは成り⽴たなくなってしまいます。そのため、地球環境を守ることは、⾃分たちのビジネスを守ることに繋がります。
そこで、取り組みの⼀つとして、海洋汚染問題解決に乗り出しました。その際、アパレル業界をはじめ、海洋プラスチック問題への警鐘を鳴らし、その削減のための取り組みを進めていたParleyとパートナーシップを組んだのです。アディダスは、従来から研究していた素材開発の技術を⽣かし、Parleyが回収する海洋プラスチックゴミを、⽷や繊維に⽣まれ変わらせ、新たなスポーツ⽤品を販売するに⾄りました。さらには、このような取り組みを発信し、消費者と共に取り組むことで、社会への貢献はもちろん、ファンとの関係性を強化することにも役⽴てています。まさに本業と結びつけながら、SDGsの提⽰する課題を解消している例といえるのではないでしょうか。
出展:addidas公式サイトより
https://news.adidas.com/parley-ocean-plastic/adidas-aims-to-end-plastic-waste-with-innovation—partnerships-as-the-solutions/s/be70ac18-1fc9-45c1-9413-d8abaac2e849 より
SDGsの⽬標は世界の課題であり、一人ひとりが解決のために取り組むには、あまりにも⼤きな課題にみえるかもしれません。しかし、企業の⼤⼩、個⼈、国や地域も関係なく、それぞれがお互いの強みを活かすことで、その達成を加速し、拡⼤させていくことができるはずです。
当社ではオンライン相談会も開催しております。
具体的な課題はなくとも、新たな時代なビジネスや環境問題への取り組みについて気軽に話してみませんか?パートナーとしてご助力になれば幸いです。
ご希望の方は、下記より「オンライン相談会希望」とご記入の上お申込みください。