直面する“2024年問題”。乗り越えるためのシステムの見直しと大洞印刷ができること。

 

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物流の2024年問題とは?

 物流の2024年問題とは、働き方改革関連法に基づき、2024年4月から自動車の運転に関する年間の時間外労働の上限が960時間にまで規制されることによって生じる、あらゆる問題のことをいいます。

 

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 現状として、およそ3割のトラック事業者で960時間を超える時間外労働が発生しています。何も対策しないままでは2030年には輸送能力が約35%不足する可能性があると言われており、社会全体で解決に向けて取り組んでいかなければならない問題なのです。

トラックドライバーの労働環境の現状

 2019年4月から「働き方改革関連法」が段階的に施行され、一般企業における年間の時間外労働の上限を原則720時間とすることが定められました。しかし、トラックなどの自動車運転業務については、現状の労働環境や業務の特性を考慮すると長時間労働をすぐに是正することが困難であることから、時間外労働の上限は年間960時間とされ、適用までの猶予期間が設けられていました。では、トラックドライバーは実際どのような環境で働いているのでしょうか。

 

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 年間労働時間の推移を表すデータを見ると、2021年のトラックドライバーの年間労働時間は全産業と比較して約2割長いという結果が出ています(グラフ1参照)。しかし、年間所得額は全産業に比べ約1割少なく(グラフ2参照)、労働時間に対する賃金の水準が他の産業よりも低いというのが現状です。また、有効求人倍率(求職者1人に対して何件の求人があるかを示す数値)は2021年に約2倍となっており(グラフ3参照)、今後も2024年問題によってさらなる人材不足に陥ることが懸念されています。

 

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 以上のような実情を踏まえ、自動車運転業務にかかわる業種における法改正の適用には、一般企業に比べ約5年間の猶予期間を与えられていました。しかし、ついに2024年4月から適用がスタート。トラックをはじめとする自動車での輸送は国内の物流において輸送総重置の9割以上を担っており、物流に欠かせない存在です。2024年問題によるダメージも大きいと見込まれているからこそ、本格的な労働環境の改善・改革が求められています。

働き方改革関連法によって変わるドライバーの労働環境

 時間外労働の上限が960時間に定められたことを踏まえて、2022年に「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」が制定されました。拘束時間や休息時間のルールなど労働時間の改善のための基準が定められており、2024年4月から適用されます。

 

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“物流の2024年問題” で起こりうる影響とは

1 物流の停滞

 時間外労働の規制によりドライバーの稼働時間が減少することで運べる荷物の総量が減ってしまいます。 そのため、今までよりも配送に多くの時間を要したり、予定通りに荷物が届かなくなる可能性があります。

2 輸送費の高騰

 運べる荷物の量が減るということは、その分トラック事業者の売上も減少します。 さらにドライバー不足という背景もあり、人件費の引き上げが求められることを踏まえると輸送費の高騰は免れられません。

3 利益の減少・値上げ

 運賃の値上がりが起こると、荷主がトラック事業者に委託する際の輸送費だけではなく、原料や資材の調達コストも上がり、利益の減少が見込まれます。 そのため商品やサービスの値上げを余儀なくされてしまいます。

4 取引の縮小

 輸送コストの高騰により遠方への輸送が困難になり、取引エリアの縮小を強いられる可能性があります。また配送条件によっては、トラック事業者に依頼を受けてもらえないということも起こり得ます。

 

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物流の2024年問題による具体的なリスク

 これまでの物流は、トラックドライバーの時間外労働に頼っている面が多くありました。しかし、2024年4月から始まる労働時間の規制で1日の拘束時間が原則13時間までと定められたことで、これまで13時間以上かけて1人で運んでいたものは2日に分けて運ぶか、2人で運ばなければならず、今までは1日で届いたものが2~3日かかったり、翌日配達や日時指定サービスの提供が困難になる可能性があります。
 また、労働時間の短縮により運べる荷物の量が減少することで、同じ量の荷物を運ぶためにはより多くのドライバーが必要になります。 元々トラックドライバーの数は年々減少傾向にありましたが、物流の2024年問題によってトラック事業者の売上が下がり、ドライバー不足はさらに加速すると考えられます。
 その結果、輸送コストが上昇し、荷主にも大きな影響を与えます。 原料や資材の調達、商品の出荷にかかる輸送コストが増えることは利益の減少に繋がり、商品やサービスを値上げせざるを得なくなるのです。 さらに、輸送コストの高騰により遠方への配送が困難になったり、手積みや手降しの輸送、土日祝日や夜間の輸送がトラック事業者から敬遠されるなど、配送自体ができなくなる可能性もあります。

それぞれの立場で問題に向き合うことが必要

 こうしたさまざまな影響が懸念される、物流の2024年問題。 解決のためには、国がルールを整え、トラック事業者はドライバーの確保を行い、荷主は輸送システムのDXを進め、消費者は再配達依頼を減らすよう心がけるなど、それぞれの立場で改善に取り組むことが重要となります。

“物流の2024年問題”を乗り越えるために

 物流の2024年問題を乗り越えるためのアプロ ーチはさまざまですが、特にトラック事業者と荷主が協力して出荷業務の効率化を進めることがポイントになります。 より効率的にたくさんの荷物を運べるようになれば、物流の停滞や輸送コストの問題の解決やドライバーの労働時間の削減に繋がります。

出荷体制の効率化

 現状の物流システムにおいて、ドライバーの長時間労働の主な原因と考えられているのは「荷待ち」と 「積み降ろし」です。荷待ちとは、荷物の積み降ろしのためにドライバーが待機する時間のこと。 通常1時間以上待つことが多く、長い場合は4~5時間待機しなければなりません。 この問題はトラックの呼び出しやバース(積み降ろしのためのスペース)の予約システムを導入することで、積み降ろしの体制が整うまでの調整の時間や、バースの混雑時の長時間の待機を防ぐことができます。 また、積み降ろしの際は手作業で一箱ずつ運ぶのではなく、パレット(荷物を乗せる台)を使いフォ ークリフトなどで運ぶことで大量の荷物を素早く積み込むことが可能に。 そのほかにも、在庫管理システムを取り入れて必要のない荷物の輸送を削減するなど出荷体制を見直し、荷主とドライバーの連携を強化することで長時間労働の改善に繋がります。

“バケツリレー’’で労働時間を削減

 近年、新たな物流の仕組みとして 「中継輸送」が注目されています。 例えば、関西から関東へA、関東から関西へBの荷物を運ぶ場合、従来はA、Bの荷物をそれぞれ片道8時間、往復16時間かけて運んでいました。 それに対し 「中継輸送」では関東と関西の間に中継拠点を設け、2台のトラックが中継拠点で落ち合い、AとBの荷物を積み替えて再び引き返す “バケッリレー’’方式によって、輸送時間がそれぞれ片道4時間、往復8時間に短縮できるのです。 いずれ全国各地に中継拠点が増えれば、さらに効率的に荷物を運ぶことができるようになります。

 

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大洞印刷での取り組み

 大洞印刷では、物流の2024年問題や環境問題に取り組み、その対策となる仕組みやサー ビスを提供しています。 ここではその一部をご紹介します。

 

不要なものを運ばないための“最適生産”

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 “無駄なものを作らない’’ことは、不要な配送の削減に繋がります。 大洞印刷では受注生産に対応し、本当に必要なものを、必要な時に、必要な分だけ製造することができます。受注生産は在庫を保管する必要がなく、在庫管理のための倉庫への輸送が省けます。また、版が不要なデジタル印刷なら小ロットでの商品製造も可能です。

 

輸送の回数を削減する“フルフィルメント”

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 商品の製造と 梱包を別の会社で担うことが多い中、大洞印刷では「フルフィルメント」サービスによって、受注から製造、用途に応じたアセンブリ(組み立て)作業、梱包、エンドユーザーや販売店舗への個別発送までを一貫して行っています。 加工や梱包を委託するための輸送を必要としないので、輸送回数を減らすことができます。

 

輸送距離を短縮する “適地生産”

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 今後は大洞印刷のプラットフォ ーム 「MAGIC」を活用して日本各地の企業と連携し、それぞれの企業が受けた注文を、より届け先に近い工場から製造・出荷することで輸送距離を抑える 「適地生産」の取り組みも視野に入れていきます。 印刷業界にも 「地産地消」を取り入れることで、輸送コストを抑えるだけでなくCO2の排出量の削減に繋げられます。

 

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