前号のWinformationにて、2022年からいまもなお注目され続けている「Chat GPT」についてご紹介いたしました。Chat GPTとは、自然言語処理技術を応用したチャットボットエンジンです。GPTとは、「Generative Pre-trained Transformer」の略称で、膨大な量のテキストデータを学習することにより、自然言語を理解し、応答を生成することを可能にしています。Chat GPTのように指示された内容に従って、学習したデータを活用して新しいデータを生成するジェネレーティブAI（生成AI）の市場が活発化しています。
今回のSpecial Topicでは、ジェネレーティブAIについてを解説しながら、印刷会社と関係が深い「画像生成AI」に焦点を当てご紹介してまいります。
ジェネレーティブAIとは？
ジェネレーティブAI（Generative AI）とは、与えられたデータからパターンやルールを抽出し、学習しながらそれをもとに0から1を生み出すことを特徴としています。アメリカに拠点を置く、業界最大規模のITアドバイザリ企業ガートナー社が、「2022年の戦略的テクノロジーのトップ・トレンド」にて、注目すべきキーワードとしてジェネレーティブAIを挙げたことから注目されはじめました。
ジェネレーティブAIと従来のAIの違いは？
これまでの「AI」と上部でご紹介したジェネレーティブAIの違いを簡単にお伝えすると、オリジナルのコンテンツを生成できるかどうかになります。
従来のAIは、大量のデータからパターンや規則を学習し、その学習に基づいて予測や分類を行う能力を持っています。これは「教師あり学習」や「教師なし学習」として知られる手法で、具体的なタスクに対するモデルのトレーニングに焦点を当てています。たとえば、従来のAIは画像認識や音声認識などのタスクに利用され、訓練データを元に特定の入力に対する出力を予測する能力を持っています。
反対に、ジェネレーティブAIは、学習したデータを基に新しいデータやコンテンツを自動的に生成する能力を持っています。ジェネレーティブAIは、たとえばデータから特徴を学習し、新しいコンテンツを作り出すGAN（Generative Adversarial Network）と呼ばれるアルゴリズムを使用して、既存のデータの特徴やパターンを学習し、それを基にして新たなデータを生成します。これにより、画像、音声、文章などのコンテンツを生成することが可能です。そのため、ジェネレーティブAIは創造性や想像力を持つようなタスクに適しています。
（画像引用：ジェネレーティブAI（生成AI）とは？従来のAIとの違いなどを解説| 株式会社セールスフォース・ジャパン） https://www.salesforce.com/jp/resources/articles/business/generative-ai/
ジェネレーティブAIで生成できるコンテンツ
では、ジェネレーティブAIを活用することで、どのようなコンテンツを生成することができるのでしょうか？以下にて挙げてみます。
文章生成
冒頭でご紹介した「Chat GPT」が文章生成AIにあたります。テキストボックスにテキストを入力することで、AIが内容を解析し、回答を生成します。人間と対話するような自然な応答を可能にしています。文章生成だけでなく、ミスを指摘したりなど校正としても使用されているのです。Winformation Vol.58のSpecial Topicでもお伝えいたしましたが、Chat GPTは、偏った情報や誤った情報を生成してしまう可能性があるので、アイデアをもらう程度で考え、鵜呑みにしないことが大切です。
画像生成
テキストで指示を出すことにより、オリジナルの画像を生成することができるAIです。わずか数十秒ほどで画像を生成できるため、クリエイティブにかかる時間の削減や、アイデアの創出の助けをしてくれることでしょう。印刷業界としては、一番関わりが強くなる部分だと考えています。
音声生成
テキストや音声の入力により、パターンを学習して新しい音声データを生成するAIです。この技術は、声優の声を模倣し、新しい文章を読み上げるなどの応用に使用されています。音声生成AIは、主にナレーションやアバターの声に使用されることが多いです。
動画生成
テキストで指示をすることにより、動画やアニメーションの生成ができるAIです。これまで動画生成AIは、画像生成AIよりも膨大なデータが必要になったり、それに合った演算能力を必要とすることにより課題が多く、とても難しいことだと考えられてきました。
動画生成AIで生成した動画を見ると、まだぎこちなく、短い動画の生成までとなってしまっていますが、今後技術の進化によりさらに解像度が高く、長い動画の生成も可能になると予測されています。この技術を応用することにより、映画などを生成できる日もそう遠くないかもしれません。
音楽生成
テキストで指示を出すことで、楽曲を生成してくれるAIです。人間が作曲した曲と比較するとやはり劣りますが、動画生成AIと同じく今後成長することにより、人間が作曲した曲と見分けがつかなくなると考えられています。
